「め、メアド教えて?」

俺は、少ない勇気を振り絞って君に聞いたんだ。

「え……私の?」

いつも、教室の隅で外の景色を眺めている君の横顔が好きだった。

「ダメかな?」

「あ、そういう意味じゃないの。はいどうぞ」

そこで初めて君と目が合う。ぱっちりと、くりくりしている大きな瞳。俺はその瞳に横顔以上にくぎづけになった。

「へぇ…神代 裕也くんって言うんだね?よろしくね?」

赤外線で名前を確認したのか、君は初めて俺の名前を呼んでくれた。それだけのことがたまらなく嬉しかった。

それからは、俺の猛烈なアプローチが続いた。
直々、メールしたり、電話したり…。少しずつ、少しずつだけど君は俺に心を開いてくれた。

そんなある日、アルティメット部に行ったら、思ってもなかった事が起きた。君は、運動場で体操着姿で忙しそうにスコアを付けていたよねだ。

「おぉ裕也。彼女、成沢莢未ちゃん。今日からマネージャーになってくれたんだ」

「よろしくね、裕也くん」

先輩の紹介に、ペコリと頭を下げた君。君はあの時笑っていたよね。

その日の練習は、あまり身が入らなかった。好きな子の前で緊張していたのだろうか。

「おい裕也、動きが固いぞ。可愛いマネージャーが原因か?罰としてダッシュ十本追加!」

「そんなぁ…」

「十五に増やしてもいいんだぞ?」

「行ってきます!」

だけど不思議と、辛くはなかったんだ。