「お兄ちゃん。誰かお客さん来てるの?」

「…美咲」

「……私、美咲と話したいことあるんだよね。私もお兄ちゃんの部屋に行っていい?」

すると陽菜は俺の返事を待たずに、階段を登り始めていた。

「お…おい!」

「私、オレンジジュース!」

……そういう問題ではないんだが。無事に済むといいけど、きっと昨日の様子だとまた、何かと揉めるだろう。

「美咲ちゃんだっけ。良い子そうじゃない」

「母さん」

いつの間に来ていたのか、母さんがチーズケーキを切り分けていた。

「…莢未ちゃんとは向き合えたの?」

「自分の中では…かな」

「今度の子は、美咲ちゃんは、守ってあげるのよ」

「…分かってるよ」

今度は、何があっても美咲を守るんだ。俺が、美咲の目になるんだ。
俺は意を決して、修羅場となっているであろう俺の部屋への階段をゆっくり登り始めた。