車内には重苦しい雰囲気が漂っていた。

「あのぉ…一つ聞いてもいいですか?」

沈黙に耐え切れず、俺は執事さんに問い掛けた。

「何なりとお申し付け下さい」

「…渚さんはどうして車ではなく、電車で通学を?」

途端に、執事の顔が曇る。聞いてはいけない質問だったのか?少しの沈黙の後、執事は口を開いた。

「…全ては私達のせいでございます」

「どういうことでしょうか?」

「中学の頃…私達は渚様を過保護にお世話しすぎてしまいました。送りはもちろん、お迎えも…。子供達は、自分とは違うことを避けるのです。渚様に友達と呼べる人はただお一人だけでした」

確かに、そんなことをしてたら、近寄りがたいというイメージを与えちゃうかもな…。

「ですから、高校からは渚様の好きにさせようとお父様からお召しを伺ったのです」

「…そうなんですか」

「裕也様、本日は本当にありがとうございました」

「当然のことをしたまでですよ」

何だか、渚を見る目が変わるような気がする。あいつも、ずっと寂しかったんだよな…。