「お、お邪魔しまぁす」

俺の心臓は冗談抜きで口から飛び出そうだった。付き合った初日に、彼女の家何て普通ありえるか?

「そこのソファーにお掛けになってて?今、紅茶を入れますから」

「は、はぁ。どうも…」

俺は言われるがままにソファーに座った。とてもまふっとしていて柔かく、吸い込まれるような感触だった。

「美咲、何でこんなことになったんだよ?」

俺は小声で美咲に話し掛ける。

「知らないよ。だけど多分、私達が話してるのがお母さんの耳に入ったんじゃないかな?」

同じく、ひそひそとした声で返してくる美咲。俺は横目で時間を確認する。すでに時間は二十一時を少し回った頃だった。

「だけど、お父さんがいない分だけマシかな。もしいたら俺、飛び上がっちゃうよ」

俺がそう言ったと同時に玄関のドアが開いた。

「ただいま。おや……?見慣れない靴があるなぁ。お客さんかい?」

ドキン……!
俺の代わりに俺の心臓が飛び上がってしまった。

「……裕也。お父さん帰って来ちゃった」

美咲は申し訳なさそうに頬をかく。な、何かどんどん事態が悪化してるような気がするぞ……。