二人で歩くと時が進むのがやけに早く感じる。俺達はもう美咲の家の前に来ていた。

「今日はありがとう」

「うん、また明日」

お決まりの別れの言葉を言うけど中々、美咲は家の中に入ろうとしないし、俺も何だか、もう少し美咲と一緒にいたい気分だった。

「ほら、美咲。早く帰らないと」

「帰るって言っても、二、三歩後ろに下がればもう家なんですけど」

俺達の間に、いい感じの雰囲気が流れる。俺が最後にキスをしようとした時だった。

「そうね。その通りだわ。美咲」

ガチャリというドアの音と共に現れたのはスラッとした綺麗な女性。どことなく、美咲に似ている。しかし、美咲はどこか焦り気味だった。

「お…お母さん」

は……?お母さん?
こんなに綺麗なのに、お母さんなのかよ?

俺が呆然と美咲のお母さんを見ていると、向こうも俺に気付いたみたいでニヤリと笑った。

「ほう…。美咲、あんたいい男捕まえたね」

「お母さん……!」

ここはいちよう挨拶しておいた方がいいのかな?

「あの、今日から美咲さんとお付き合いさせてもらってる、神代 裕也です。今日は遅くまですみませんでした」

俺は知ってる範囲で敬語を使って挨拶をした。少し緊張したから、何か言葉が変かもしれない。

「今日から……?」

お母さんは少し驚いたようだったけど、またすぐに笑顔を取り戻した。

「あらまぁ、家の子を好きになってくれるなんて物好きな子ねぇ。さぁ、お上がりになって?お茶でも飲みながら話しましょ?」

「え……?いいですよ!もう時間も遅いし……」

「遠慮しないの!ほら!」

俺は半ば、引きずられるようにして美咲のお母さんに家の中に引きずり込まれた。俺、これからどうなるんだ?