「裕也がもっと早く教えてくれれば良かったんだよ?」

帰り道、美咲は落ち込んでいた。理由はいたって簡単だ。願い言が間に合わなかったのだ。

「あのなぁ、美咲が俺を騙すからだろ?」

「それとこれとは関係ない!」

ピシャリと言い放つと美咲は、つんとそっぽを向いてしまう。さっきからこれの繰り返しだ。

「ちなみに何を願おうとしたの?」

「ずっと一緒にいられますように、だよ?」

そう言って顔に手を当てて頬を染める美咲。俺は思わず笑ってしまった。

「何で笑うの?」

怒ったように俺を睨みつけて来る美咲。俺は、美咲を抱き寄せて耳元で呟いた。

「それなら、さっき俺がお願いしといたよ」

「ほんとに…?」

「ああ……」

俺は美咲の髪を撫でる。美咲は照れ臭そうに俯いた。

「俺、美咲のこの長い黒い髪も好きだな。サラサラだし」

「やだなぁ、褒めても何も出ないよ?それに、スポーツする時は結構邪魔になるし……」

確かに今日はアルティメットをするつもりで来たのか、髪をゴムで短く結わいていた気がする。

「でも俺は長い髪の方が好きだな、美咲は……」

「そう?じゃあ、頑張って手入れするね?」

ああ、やっぱいいな、こういう会話。彼氏彼女って感じでさ。だけど、少しだけ胸の奥が痛むのは、やっぱり莢未のことを気にしてるからかな?