「美咲」

気付いたら俺はここにいた。何かに導かれるように、俺はここ、満面の星が輝いている星見ヶ丘に来ていたんだ。

俺は、座り込んで空を見ている美咲の隣に腰を下ろす。あの時と変わらない星。だけど、何故か前よりも遠く感じたんだ。

「…裕也。私が前に言った言葉覚えてる?」

未だに空を見上げている美咲。

「ああ、今ならその答、言えるよ」

『あの星と、私の瞳。
どっちが綺麗かな?』

美咲と遊んだ帰りに、星見ヶ丘で俺に投げかけた言葉。

「俺は、み…」

「裕也、聞いて。私、私ね…」

美咲は、立ち上がって、
『あの日の莢未』と同じように笑った。





















「もうすぐ光が見えなくなっちゃうの」

「…………え?」

「私の瞳ね、もうすぐ光が入らなくなっちゃうの。早い話が、私、もうすぐ失明しちゃうんだ…」

失明……。嘘だろ?それがもしホントなら何で美咲は笑っていられるんだよ?俺は、美咲の肩を思わず揺さぶった。

「だ…だけど…!な…治るんだろ。こんな医療が発達した今…」

美咲は小さく、そしてゆっくりと首を横に振った。

「あのね、新種の病気で……目のダメージが…ハーラーマンストライフ症候群に酷似してるんだって。だから……」

ハーラーマンストライフ症候群…。難病中の難病じゃないか…。

「美咲…」

美咲は俺の目をまっすぐ見つめて来た。淡い青色をした美咲の瞳は、うっすら涙ぐんでいた。







「そんな私の瞳でも、いつか光を失う瞳でも、綺麗って言ってくれますか?」

ついに、美咲の目からは大粒の涙が零れ落ちた。
たまらず、俺は思わず美咲を抱き寄せた。