「何だよこれー!!」

「おい…うるさい」

突然、悲鳴にも似た言葉をあげた耕平を大地が、たしなめる。

「だってこれ…見てくれよ!」

涙ながらに見せて来たのは、さっきまで耕平が食べていたハンバーガー。

「これがどうした…?」

「レタスとオニオンの順番が逆なんだよ!!」

「腹に入れば全部一緒だ」

大地が心底呆れたように耕平に呟く。こいつはのん気だな。しかし、話ばっかりで腹が減って来た。俺も食べようと思い、ハンバーガーに手をのばした。

「裕也、お前ものん気だな」

俺は大地に睨まれる。仕方なく、俺はハンバーガーを置いた。

「何がだよ?」

「…お前、榎本のこと好きなんだろ?」

「俺は…」

好きだ。美咲が好きだ。
前までは自信を持って言えた言葉。今は、その言葉も心の中でだけ虚しく跳ね返るだけだ。

「いいか。成澤莢未がどうとかペンダントがどうとか、そんなのはどうだっていいんだ。榎本は榎本だ」

「美咲は…美咲…」

「そうだ…。榎本は何人でもない。世界でたった一人の存在なんだ。瞳が似ているからどうした?そんなのただの“情報”にしか過ぎない。違うか?」

大地の言葉が、くすぶっていた俺の心に答えを出してくれた。