「あれ、裕也?この子は?」

「ああ、俺の妹」

俺の紹介に頭を下げない陽菜。しかたなく、俺が陽菜の背中を叩くと、陽菜は渋々、美咲に名前を名乗った。

「初めまして。陽菜です。美咲、よろしくね?」

よ……呼び捨てかよ。やっぱり美咲も怒ったのかな?少し震えている。しかし、次に美咲が言ったのは俺が予想だにしない一言だった。

「可愛いー!!」

美咲は陽菜に抱き着く。

「こちらこそよろしくね!陽菜!」

俺と陽菜は硬直した。美咲と莢未がダブる。陽菜が莢未に初めて挨拶した時とリアクションが全く一緒だったからだ。

「こんな可愛い妹がいるなら言ってくれればいいのに」

まるで莢未のリプレイだ。忠実に莢未の言葉を繰り返している。

「さやみ…」

「お兄ちゃん…!!」

陽菜が俺の頬を思い切りひっぱったく。

「痛っ…何すんだよ…!」

「こいつと莢未を一緒にしないで!莢未は…莢未は…」

パチン!

また頬を叩いたような音がした。しかし、俺が殴られた痛みはない。

「陽菜。私も言うわ。
私は私。莢未と一緒にしないで?」

美咲が陽菜を叩いたのだ。普段は見せない美咲の思わぬ行動に俺は呆気に取られていた。