「榎本さんおはよー」

「あ…おはよー…」

俺と榎本さんの二週間ぶりの会話は、実にぎこちない挨拶から始まった。

「榎本さんは、部活って何やるか決めた?」

「うーん…私、色んな部活から勧誘受けて迷ってるんだよね…」

さすが、自らスポーツオタクと豪語するだけのことはある。だけど、榎本さんが必要なのは俺らも一緒だ。俺は勇気を振り絞って言った。

「俺さ、アルティメット部作るんだけど、榎本さん一緒にやらない?」

平然を装って聞いてるけど、心臓の音はバクバクだ。榎本さんが口を開くまでの時間が永遠に感じるほどだ。

「良かったぁー。誘ってくれないかと思ってた」

「え?」

「だって…!二週間くらい前から神代君、私とあんまり話してくれなかったじゃん!だから…嫌われたのかと…」

…どうしてこの子は俺のツボを巧みについて来るんだろう。もう抱きしめたいくらい、可愛いくてたまらない。

「で、誰がやるの?」

「えーと、耕平と大地は掛け持ちしてもらって、後は沙梨奈も手伝ってくれるって言ってたな…。それで後は、な…」

「…沙梨奈?」

「ああ、宮沢さんだよ」

「ふーん」

榎本さんは、それだけ言うと、どこか面白くないような顔を浮かべた。…俺、何かしたかな?

「やっぱ、私やらない」

「………え?」

「だから、やらないって言ったの!!」

「な…」

その後は、俺が何を言っても全く反応してくれなかった。一体、俺が何したっていうんだよ?