「…ここは?」

部屋を見回しても、自分の今居る場所に見覚えはなかった。すると、さっきの夢の中で聞こえて来た声が響いた。

「保健室だよ。神代君…大丈夫?大分うなされてたんだよ…?」

俺は声の主を確認する。そこにいたのは、榎本さんだった。うなされてたせいだろうか……?自分でも驚くくらいの寝汗をかいていた。

「大丈夫だよ」

今にも泣きそうな榎本さんに笑って言うものの、表情は変わらなかった。

「大丈夫じゃないよ!本当に…本当に心配したんだよ!」
  
「…ごめん」

昔から俺は何も変わっていない。女を泣かせてばかりだ。あの時だってそうだ。莢未が死んだという現実から目を背けた。
向き合いたくなかった。
逃げたかった。俺が死ねば良かったと何回思ったことか…。

神様は残酷だ。
あの日から俺は、神様を信じなくなった。

「ごめん…」

それしか言えない自分が嫌だった。憎みたくなるほど悔しかった。俺は、血が出るくらいに、拳を握りしめた。