俺らが黙ったのを確認してから猪頭は話を再開した。

「いちよう明日からは平常授業ということになっている。部活も明日から二週間が仮入部期間だからな。じゃあ神代以外は解散」

「ちょっ…何で俺だけ?」

早口でまくしたてた猪頭に俺は異を唱える。

「お前は朝、榎本と話し込んでただろ?榎本もうるさい奴の隣になって可哀相だな」

猪頭はそれだけ言うと、俺の手にホウキとちりとりを持たせ、上機嫌で教室を出ていった。
マジかよ…。俺が呆然としている間に、クラスの皆は次々に、俺を茶化しては帰っていく。

「裕也、頑張れよ」

耕平がケラケラ笑いながら俺の肩を叩いてから帰って行った。ったく……「手伝うよ」くらい言えよな。

「裕也、手伝おうか?」

「あ、いいよいいよ。気にすんなって

しかし、声をかけて来てくれる大地みたいな奴に頼むのも野暮だ。

「神代くん、私も…」

最後まで言わさずに、俺は榎本さんを教室から追い出した。全く、可愛い子には迷惑をかけられないからな。俺は、ため息をついてから一人で黙々と掃除を始めた。