教室に戻るとすでに、猪頭が何やらプリントを配り始めていた。

「神代、津田、京島、遅いぞ。早く席に着け」

俺ら三人は猪頭の機嫌をこれ以上損ねないように急いで席に着いた。俺達が席に着くのを見て、猪頭は話を始めた。

「今、配ったプリントは進路選択のことだ。理系か、文系かを良く考えておいてくれ」

理系か文系か……。とは言っても俺の夢は決まってる。俺はすぐにシャープペンで文系に丸を付けた。俺のしたいことは通訳だ。世界中の人と話せるというほど、魅力的なことはない。ただ、今の所俺の英語の成績は芳しくない。

「神代君はどっちにした?」

俺が答える間もなく、榎本さんは俺のプリントに目を走らせる。

「文系かぁ……。私は理系なんだ」

榎本さんは少々、がっかりしたように呟くと、すぐに笑顔を取り戻した。

「榎本、神代、少しうるさいぞ」

「すみません……」

榎本さんは謝った後、罰が悪そうに俺にチロッと舌を出して来た。もちろん俺がドキッとしたのは言うまでもない。