「裕也、お前さっき榎本さんと何話してたんだよ?」

部活紹介が終わると、耕平と男一人がすぐに俺の所へ来た。誰だこいつ?黒い髪に眼鏡を掛けたどこか知的奴。俺はこいつにそんな印象を抱いた。

「ああ、俺、同じクラスの京島 大地(キョウシマダイチ)っていうんだ。よろしくな、裕也」

男は俺の視線に気付いたのか自分の名前を名乗った後に、右手を出して来た。

「ああ…よろしく」

俺は、大地と握手をしていてふと気付いた。何か、宮沢さんの時の握手とは違うな…。まぁ、相手が男だからかもしれないけど。

「そんな自己紹介よりも裕也、さっき何話してたんだよ?」

「別に、お前らに言っても分からない話だよ」

「何だよ…怪しいな…」

尚も怪訝な目を向けてくる耕平。その様子をただ眺めている大地。

「じゃあ耕平、お前アルティメットって知ってるか?」

「知ってるよ…究極って意味の英単語だろ。馬鹿にすんな」

自信満々に言う耕平だが残念ながらそっちのアルティメットではない。

「大地は知ってるか?」

「英単語じゃないとするなら初耳だ。悪いな」

お手上げとばかりに手を挙げる大地。やはりアルティメットというスポーツの知名度が低いことが証明された。もちろん、部活紹介の時にアルティメット部というものは存在しなかった。

「大地は何か部活入るのか?

「多分サッカーだ」

どうやら帰宅部は俺だけのようだな。自分で聞いておきながら少し悲しくなった。