その電車が揺れた一瞬の隙間で俺は見てしまった。一人のオッサンが、女子高生のスカートに手を入れているのを…。

女子高生は、必死に耐えているのか、苦悶の表情を浮かべていた。

周りの人は、我関せずの姿勢を貫いている。
…所詮は他人事か。

「次は、河岸河岸。お出口右側になります」

どうやらこの電車は、もうすぐ駅に到着するようだ。聖藍高校がある聖藍駅は、河岸の二つ先だが仕方ない…。

ドアが開いた瞬間、俺はオッサンと女子高生を電車から無理矢理降りろした。そして、持てるかぎりの大声を痴漢男にぶつけた。

「お前今、痴漢しただろ!?」

「な…何を根拠に…」

そう言う痴漢男は、少し怯み気味だった。

「とぼけてんじゃねぇ!」

「どうかしましたか!?」

俺の怒鳴り声に、駅員が慌てて飛んでくる。

俺は、軽く事情を説明すると駅員は警察を呼んでくれた。五分もしない内に、パトカーはやって来た。

男は小さく震えながら、パトカーに乗り込んでいく。

俺も重要参考人として、女子高生に付き添って署まで行くことになった。

っていうか俺…今日、入学式なんだけどな…。