「やっと来たか裕也!待ちくたびれたぞ」

教室に着くや否や、俺は耕平に制服を掴まれた。

「…何か約束したっけ?」

必死に頭を動かすけど、思い当たる節がない。そんな俺を見て、耕平か大袈裟にため息を着く。

「裕也忘れたのか?昨日、沙梨奈ちゃんのメアドを聞くのに着いて来てくれるって言っただろ!」

…そう言われてみれば、そんなことを約束したかもしれない。ってか、本気だったのか?

「じゃ、今から行くぞ」

「おいっ…!?」

俺の返事を待たずに、耕平は宮沢さんの席へと足を進め始めた。

…宮沢 沙梨奈。
絶対、どこかで聞いたことある名前何だよな…。記憶の糸を辿っていっても何故か思い出せない。
…だけど言えるのは。とてつもなく嫌な予感がするということだけ。

「耕平、俺やっぱり…」

行けない。そう言おうとしたのだが、もはや手遅れだった。

「宮沢さん、メアド教えてくれない?」

耕平はすでに宮沢さんの前で携帯をちらつかせていた。宮沢さんはキョトンとした様子だったけどすぐに笑顔を取り戻した。

「別にいいよ?」

「ほんと?やった!」

両手を空高く上げてガッツポーズをする、耕平。俺いらないじゃん。それを悟った俺は早くこの場から離れようとした。
やっぱり、実際会ってみて、どうも前に会った感が否めかったからだ。