「そう言えば榎本さんってどこに住んでるの?」

「星見ヶ丘だよ」

星見ヶ丘って…。俺は脳内で地図を広げる。
確か俺の住んでる菅代と反対方向だったはずだ…。いちよう確かめて見るか…。

「星見ヶ丘って菅代とは逆の方向に行くんだよね?」

「あ、うん。そうだけど…神代くん菅代に住んでるの?」

俺が頷くと、榎本さんは少し顔を俯かせて言った。

「そっか、じゃあ一緒には帰れないね…」

「え?ちゃんと送ってくから大丈夫だよ」

こんな可愛い子を一人で帰すのは男に反する。

「で…でも悪いよ…」

「平気平気。榎本さんに何かあったら、渚に怒られちゃうからさ」

「…じゃあお言葉に甘えちゃおうかな?」

榎本さんは遠慮がちに微笑むと、俺のすぐ横を歩き始めた。

肩と肩が触れ合うような距離。まるでカップルみたいだ。

俺は、もうすぐ醒めてしまうであろう夢の時間を楽しむことに決めた。

日はすでに落ち、空はすでに暗くなり始めていた。