「さっきから、渚とは普通に話してるのに、私とは目も合わせてくれないじゃん…だから…」

だんだん、声も小さくなっていく。これはまずいと思った俺は、まず誤解を解くことにした。

「嫌いなわけ無いじゃん!」

「じゃあ何で…何で私から目を逸らすの…?」

「それは…」

俺は言葉に詰まってしまった。まさか『可愛いから照れる』何て言えない。

「ほら!やっぱり私のこと…」

榎本さんの目がうるんできてしまった。焦った俺は咄嗟に言ってしまった。

「違うって!榎本さんの瞳が綺麗過ぎて、瞳を見るのが恥ずかしいんだよ…!」

「………え?」

榎本さんが驚いたように、俺を見る。言うんじゃなかった…。気まずい空気が俺らを包みこむ。

「えっと…その…」

何か言おうにも言葉が上手く出てこない。榎本さんもずっと俯いている。

その時、間が悪いことに渚が試着室から飛び出して来た。

「…裕也ん!これは…!?」

…助かった。
俺はホッと胸を撫で下ろした。

「いいんじゃないか?」

「じゃあ買ってこよーっと!」

あのまま、気まずい空気のままだったらどうなってたんだろう?

…ここは渚に感謝だな。