「これ……!」

私は驚いた。お兄さんに連れられてやって来た小屋の中。そこにあるのは提灯の山だった。

「申し遅れたけど、俺はここ星見ヶ丘町内会のメンバーでね。昔から、流れてくる提灯の管理をしてるんだよ」

「何でですか?」

私がそう聞くと、お兄さんは苦笑する。

「今は、我が儘なカップルが増えてね。流した提灯を返して欲しいって言うカップルが後を絶たないんだ」

「そうなんですか……」

「それでお前さん……」

「美咲です」

私が名乗ると、そのお兄さんは手を叩いた。

「そうか。どっかで見たことあると思ったら榎本さん家の娘さんだったか!!」

お兄さんは一人納得している。

「……あのぉ。それで何で私をここに連れて来たんですか?」

「……君は彼氏さんの願いごと知りたくないかい?」

「……裕也の願いごと」

私は一人呟いた後、提灯の山に駆け出して、あの時徹夜で作った私の提灯を探し始めた。5分くらい探した後に、お目当ての提灯はすぐに見つかった。

「これだ……」

見間違えるわけがない。私が作って、この中に願いごとを入れて、二人で一緒に流した。

「見ても…いいですか?」

「もちろん。それは君と彼氏の物だからね」

お兄さんが頷いたのを見てから、私は提灯に手を入れた。出て来たのは、笹の葉に包まれた短冊が二枚。ピンクが私で、青が裕也。

まずは、私の方の短冊に書かれた願いごとをみる。

『ずっと裕也と一緒にいられますように!』

あの時の私、幸せいっぱいだったんだなぁ…。そして、私はずっと知りたかった答えが書かれていた水色の短冊に手を伸ばす。私は意を決して、ひっくり返した。