「裕也、私、あなたに伝えたいことたくさんあるんだ……。だけどね、不思議だよね。結局は一つにまとまっちゃうんだよ」

私は、裕也の手をギュッと握った。あなたの温もり忘れません。

「わ…私は……」

あなたが私に取り戻してくれた光を忘れません。

「あ……あなたの…」

あなたが囁いてくれた甘い声の一つ一つ、忘れません。

「彼女で……」

あなたが、私だけに見せてくれた最高の笑顔。忘れません。

「本当に……」

あなたと過ごした、たくさんの幸せな時間。たくさんの思い出、絶対忘れません。

「……幸せでした」

私が、あなたと出逢えたこと。

絶対に、忘れません。

「……だから、おやすみ」

すると、私の左手をギュッと握る感触があった。え……?

「ゆ、裕也……?」

私がそう言うと、裕也はニコッと笑ったように見えた。そして、首が縦に揺れた。

「……裕也ぁ!!」

その瞬間、裕也の生命を維持していたものが全て解除された。私の手を握っていた裕也の力が抜ける。

「……裕也」

「神代 裕也。 八月四日。15時30分23秒……ご臨終です」

裕也は、最期に笑ってた。

ううん。見えただけだよね?

だってさ、

脳死状態だよ……?

笑えるわけ、ないじゃん。

さっきの、手の感触も…

きっと筋肉が硬直したんだよね…?

そうだよね……?

その時、私は未だに左手に残っていた妙な感触が気になった。

恐る恐る手を開いてみるとそこには、Skyと刻まれたリングがあった。

「……裕也」

私の頬から、涙が一滴零れ落ち、裕也のリングを濡らした。

「……ありがとう」

私、榎本美咲は、あなた、神代裕也を絶対に忘れません。

さよなら、
私の愛したあなた。