「……渚、最初にお前が痴漢されてた時は驚いたよ。あんな出逢いは初めてだった」

「……裕也ん」

「別荘、楽しかったよ。連れてってくれてありがとう」

「……裕也ん!!」

渚は泣いてた。渚だけじゃない。皆、泣いてるんだ。

「大地、耕平。ありがとな。お前らがいたから、毎日が楽しかった」

「それは俺らも同じだっての!」

「ああ、裕也がいたから俺は渚と付き合えたからな」

えっ……?大地君と渚って付き合ってたの?

「はは、はちゃめちゃお嬢様に振り回されんなよ。耕平、お前も……」

代弁してた莢未の言葉が途切れた。どうしたんだろう?

「ばか、そんなの伝えられないよ」

莢未は涙ながらに裕也に文句を言っている。

「沙梨奈ちゃん、お願いだ。裕也の言葉、伝えてくれよ。刻みたいんだ。ずっと」

「……耕平も、莢未のこと支えてくれ。あいつ、ああ見えて誰かがいないとダメだからな。断られたって諦めんな。お前、マイペースなんだから」

「……沙梨奈ちゃん、裕也…」

『断られたって諦めんな』

莢未は、一体どんな気持ちでこの言葉を耕平君に届けたんだろう? 莢未は、耕平君のこと……。

「……陽菜。悪い。約束破っちまったな」

「……お兄ちゃん。私、まだ立派になってないよ?私には、まだお兄ちゃんが必要なんだよ……」

「……悪い」

「そんなこと、そんなこと言わないでよ……。うわぁぁん!!」

陽菜の泣き声が病室中に響き渡っている。私の胸に罪悪感がのしかかる。

だって、私だもん……。
私が、裕也を……。

そう考えると涙が枯れる事なく流れてしまう。

何で私が、死ななかったんだろう……?