「だから、自分を責めないで、美咲。榎本さんも顔をあげてください」

「ですが……」

「裕也が美咲ちゃんを選んだんです。きっと裕也は今、幸せですよ?自分の愛した人の無事を確認できて…」

裕也……。

「でも何か償いを……」

涙で声が震えている両親と、私も同じ思いだった。私は、裕也の一生を奪ってしまったんだ。

「……じゃあ美咲。裕也の分まで生きて?あの子ね、この世界が、人間が大好きだったの。美咲、裕也の夢が何か知ってる?」

「……通訳」

忘れるわけがない。あの時、事故に遭う前に、裕也が照れながらも私に話してくれた夢。

「そう、あの子ね、世界を繋ぐ掛橋になりたかったのよ。言葉の壁を越えていけるような存在に……」

「…裕也」

「だから、生きて美咲?目が見えないってのは恐いかもしれない。私が想像してるよりも全然。だけど、あなたには命がある。裕也が守ったその命で、この世界を生きてください。私達があなたの味方ですから」

裕也のお母さんの言葉は、疲れきった私の心を優しく包み込んでくれて……。

私は、また涙を零してしまった。

「私、生きていいんですか?ずっと……私が死んだらいいと……思ってました。どうせ光が見えない世界なら、私何て……」

パチン。渇いた音が病室に響いた。誰が叩いたか分からなかった。だけどその掌は温かった。