普段、来慣れている渚の別荘も夜になると気味が悪い。私は自然と沙梨奈の手をとる。

「美咲、恐いの?」

沙梨奈は私の手を優しく握ってくれる。うん、やっぱり間違ってないよね。

「莢未だよね?」

「……うん」

沙梨奈……ううん。莢未は案外素直に自分が莢未であることを認めた。

「ねぇ、莢未。裕也のこと好きだった?」

「……大好きだった」

月を見上げながら言う莢未は余りにも儚くてさ。私は少し後ろめたい気持ちになった。

「美咲、自信持って?ゆーちゃんは、美咲を選んだんだから」

莢未は私に笑いかけてくれるけど、私は……笑えないよ。

「……裕也が好きなら、何で付き合わないの?何で私から奪おうとしないの?」

「……奪おうも何も、入学式の日に打ち明けようと思った」

「じゃあ何で……?」

莢未は少し悲しそうな顔を浮かべながら言った。
あなたの悲しそうな顔、今でも忘れない。