「俺が好きなのは、莢未ちゃんじゃない。俺が好きなのは、クラスで一番可愛くて、心が綺麗で、俺の話をちゃんと聞いてくれる沙梨奈ちゃんだ」

「耕平……」

と、その時、ふすまが勢い良く開かれた。突然のことに、俺達三人は飛び上がった。

「肝試しやろうよ!!」

浴衣に着替えていた渚が俺達三人の腕を引っ張る。俺は、ちらりと莢未を見る。その顔はどこか赤く染まっていた。

「渚ちゃん、俺やるよ!」

「幽霊なんていないが、やるだけやる」

耕平も大地も何気に乗り気だった。耕平は分かるが、大地まで?

「裕也は…やらないの?」

浴衣姿の美咲は、やっぱり卑怯だ。そんな顔をしたら参加せざるをえないじゃんか。

「よし、じゃあ裕也君もいいらしいから外に行こう?」

莢未のその言葉を合図に、皆は次々と外に出ていった。だが、俺は、莢未を呼び止める。

「莢未、お前さっきどこまで聞いてた?」

「……素敵な人だね。耕平君ってさ。私、嬉しかったよ」

振り向かないで莢未は俺に言う。それが何を意味してるか良く分かっていた。

「お似合いじゃん?」

「初めてを奪っといて良く言うよ」

笑えない冗談を吐いてから、莢未は皆の元に走っていった。

耕平と、莢未か……。
いや。
耕平と沙梨奈だったな。

上手くいけばいいけどな……。