「みんな、そろそろあがったら?」

砂浜から、美咲と陽菜が声をかけてくる。確かにもうかれこれ二時間は経っている。

「ふー楽しかったぁ!」

渚は実にイキイキとした表情をしている。きっとこんな大人数で別荘で遊ぶのが初めてなんだろう。

「美咲、泳がないの?」

俺は陽菜からもらったジュースを一気に飲み干す。

「え……あ、あの……」

「裕也ん、美咲は致命的なカナヅチなのよ」

「え?」

俺が驚いて美咲を見ると、美咲は少し拗ねたように砂をいじりだす。

「別に泳げなくたっていいもん」

「やっぱりスポーツオタクってのは自称だったな」

「うるさいなぁー裕也は!」

美咲は恥ずかしいのだろうか、それとも単純に俺に殺意を覚えたのか、空き缶を俺に目茶苦茶に投げてくる。

「だけど美咲、楽しそうだったよ?」

同じくカナヅチの陽菜が美咲の肩を持つ。

「うん、みんな何かすっごく輝いててさ。私、最後の景色はこんなのがいいなって思っちゃった」

「……まだまだ。もっとたくさんの景色見せてやるからな」

「期待してるよ?」

美咲はニコッと笑う。俺と美咲の間にいい感じの空気が流れる。

「おーいみんな、久しぶりにこのチームでアルティメットやろうぜ!」

空気を読まない耕平がフリスビーを持ってくる。だけどその意見に異を唱える奴はいなかった。

「じゃあ、グッパーしよ?グッパージャス!!」

ここ、渚のプライベートビーチ。今、俺らは夏を満喫しています。多分、美咲にとっては、光ある最後の夏。それを一生懸命に彩っていこうと思います。