七月も終わりに近づいて来た。暑さは和らぐどころか、ますます厳しくなっている。

そんな頃に、渚の別荘に遊びに行くのは素晴らしい企画だと言える。

「うん……。今、裕也君と美咲と陽菜が来たから全員揃ったね！」

莢未が人数確認をすると、渚が少しにやけながら俺達を見回す。俺と美咲は恥ずかしさから目を逸らしてしまう。

「遅れたのもお兄ちゃんと美咲があんなことして……」

俺は陽菜の口を慌てて塞いだ。美咲はもう爆発してしまいそうな程、顔が真っ赤だ。

「ちゃんと裕也んと美咲は二人部屋だから続きはそちらでどうぞ？」

「……いいから早く行くぞ」

こうなった渚はたちが悪い。俺は強引に話の流れを切った。

「裕也、行くにしても川瀬のプライベートジャンボがないと行けないからしばらく待機だ」

「大地、だから渚でいいってば。私、名字で呼ばれるの嫌いなんだ」

そんな二人の話も耳に入っては来なかった。あまりに桁外れた旅行プランに頭が付いていかなかった。

「そうそう、だから俺達は可愛い女の子達と話して待ってればいいって訳だよ」

そう言う耕平は莢未と仲良く話している。何だかその行為に少し苛立ちを覚える俺がいた。

「あっ……」

その時、美咲は小さく漏らして、俺の服の裾を掴んだ。

「大丈夫…俺はここにいるから。どこにもいかないよ」

俺は美咲を軽く抱き寄せたが、なかなか美咲の震えが止まらない。目が見えなくなる周期が前よりも確実に早まっていた。

「裕也…ごめんね」

結局、ジャンボが来るまで、美咲はずっと俺の服の裾を掴んでいた。暗闇の世界で、一人闘う美咲。旅行前の俺に、大きな不安を投げかけることになった。