三人分の飲み物とお茶請けを用意した俺は急いで自分の部屋に戻った。

「ほら、持ってきたぞ」

俺が不満の色を込めて言うと、美咲が人差し指を自分のぷるんとした唇にそっとあてた。そして、目線をベッドに向けた。

そこには、小さく寝息を立てて眠っている陽菜の姿があった。俺は極力物音を立てないようにして、飲み物を置く。

「妹がこんなに疲れるまで手伝わせるなんてひどいお兄ちゃんね?」

「いいんだよ。ちゃんと見返りは用意してあるんだし」

陽菜がこんなお願いを無償で聞いてくれるわけがない。それなりの物を用意したつもりだ。

「…ねぇ、それ見てもいいかな?」

美咲は、さっき片付けたばかりの本棚に収まっている一つの本を指差した。

「…卒業アルバム?」

「うん。それに、莢未も写ってるんでしょ?」

確かに、美咲の言う通りこのアルバムには所々に写っている。しかし、クラス写真には写ってない。事故があったからだ。

「ま、たまには思い出に浸るのもいいかもな」

俺は、懐かしいアルバムを取り出して美咲と隣通し仲良く見ることにした。

「へぇ…さっきのプリで見たけど莢未さんってやっぱ可愛いんだね?」

こっちに笑顔でピースをしている莢未の写真を見て美咲が呟く。

「…何で俺なんかにこんな可愛い彼女が出来るんだろうな?」

「裕也、かっこいいもん」

美咲はそう言ってはにかむ。俺は恥ずかしいので聞き流して、次のページをめくった。