「何してるの?そんなことやってるからすぐに元通りになっちゃうんでしょ?」

苦々しく陽菜が言うと、さっき閉まった服をタンスから取り出して、丁寧に畳み始めた。

「だから、そんなことしてる暇はないん……」

ピンポーン。

俺の声を遮るかのように、美咲の来訪を告げる音が響いた。

「陽菜、急いで片付け…」

しかし、陽菜の姿は俺の部屋から消えていた。あいつ、どこに行ったんだ?

その答えはすぐに出ることとなった。階段から、美咲と陽菜が楽しそうに話しているのが聞こえたからだ。

陽菜め、逃げたな…。しかし、裏切った陽菜を責めてる時間はない。俺は、そこらじゅうに散乱してる物を、大きな箱に全部つめこんで、棚の上に置こうとした。

持ってみると、流石に重かったが、もはやこれしか方法は無い。俺がよたよたと歩き始めたときだった。

俺は気付かなかったんだ。完全に不注意だった。

足元の卒業アルバムに足を引っ掛けた俺は、豪快に箱の中の物をぶちまけた。床に穴が開いたんではないかと疑ってしまうほどの音がした。

「お兄ちゃん!」

今の音に心配したのか、陽菜がドアを開ける。

「……これは四ヶ月記念日は大掃除になりそうだね…」

美咲の呆れたような声が、俺の心を刺していった。