「だから、約束して?陽菜が立派になるまでは…私から離れないで…」

陽菜……。陽菜が自分のことを名前で呼ぶ時は、本当に怖がっている証拠だ。

俺は小指に力を入れる。

「大丈夫だから…な?」

「……うん」

俺は最後に一回だけ陽菜を強く抱きしめた。そういえば、久しぶりに陽菜に触れた気がするな。陽菜が見た、俺が消える夢というのも、淋しさから来たものだろう。

最近は、美咲に夢中だったからな…。

美咲だけじゃない。
最近、アルティメットやら友達付き合いとかで、家に帰る時間が遅くなり気味だ。今度の旅行だって、親の承認もないのに行ける気がしていた。

確かに、友達や彼女というのも、大切な繋がりだ。だけどそれ以上に、家族という繋がりも大切なはずだ。

「…陽菜ごめんな」

「…ううん。陽菜だって悪かったから……」

今思えば、陽菜と話す回数だって減った気がする。

「ホントに悪いお兄ちゃんだな。俺は」

「……ぷっ。そんなの前から分かりきってることでしょ?」

それからは、久しぶりに兄妹の会話を存分に楽しんだ。忘れていた幸せ。当たり前だと思ってたことが、幸せだった。
旅行前に確認できてよかったと思う。