俺は家に帰ると、すぐに陽菜の部屋の扉を叩いた。

「陽菜、いるか?」

陽菜の部屋から返事は返ってこない。

「…いないのか?」

俺はドアを開けて、陽菜の部屋に入った。普段は入るのが禁じられている部屋だ。

陽菜の部屋は、ピンクや白の小物でまとめてあり、いかにも中二の女の子らしい部屋だった。

そんな中で、俺は机の上に立てられている写真に目が行く。そこには、満面の笑みを浮かべている陽菜と、どこか照れてるような顔をしている、俺と莢未の写真があった。

「……莢未」

ポタ、ポタ……。

気付けば、写真の上には水滴が広がっていた。

……俺、泣いてるのか?

何で、泣いてるんだ?

慌てて涙を拭う。
だけど、頬を伝った感触までは拭えなくて……。

なぁ、莢未。俺達ホントにこれで良かったんだよな?

「…良かったんだよな」

俺は自分の左手の薬指に光る指輪を見て呟く。

莢未になくて俺にあるもの。

これは、美咲との愛の証。守っていく決意を形にしたもの。そして、莢未との決別を証にしたもの。

この指輪に二つの意味が込められているんだ。

そういえばまだ気になってたことがあるんだよな。

「何で、莢未の目と美咲の目は似てるんだろう?」

その時、俺の脳裏にとてつもなく嫌な考えが浮かんだが、俺は慌ててそれを打ち消した。

まさか、そんなはずはない。

考えすぎだ。俺は無理矢理その考えを否定する。




莢未と美咲が同じ病気だなんて……。

そんなこと、ある訳無いよな。

俺は、旅行のことを紙に書いてから、陽菜の部屋を後にした。