「英語、苦手なんだ?」

「私、日本から出ないもん」

そう言って美咲は自分の成績表を俺の前で広げる。数並ぶ5の中で場違いとも取れる英語の2が目立つ。

「何だ、美咲馬鹿じゃん。俺、完璧な彼女かと思ってたら……」

「……もーうるさいなぁ!英語何て将来使わないからいいの!」

美咲は相当気にしていたのか、成績表をそのままバッグの中に詰め込んだ。

「俺、彼女は英語ペラペラな人がいいな。ほら、マネージャーの美幸ちゃんとか!」

「裕也、次私の前で英語と他の女の名前言ったら殴るよ?」

そんな美咲に殺気を感じた俺は素直に謝った。これ以上はまずい。俺の第六感が囁いてくれる。

「美咲、裕也くん。
今ちょっといいかな?」

「え?どうしたの沙梨奈?」

「ここじゃ話しにくいから、屋上行かない?」

確かに莢未の言う通り、今教室には、成績表を手にしたことにより起きる悲鳴や歓喜の声が飛び交っている。話をするのに適した場とは、お世辞にも言えない。

俺達は、莢未の案に賛成して、屋上へと向かうことにした。