「次、神代。まあ、何と言うかつまらない成績表だな。お前は」

「余計なお世話っすよ」

俺は猪頭から通知表を奪うように取ると、こっそり眺めた。確かに体育と英語以外は3が並んでいる。

「うわー裕也の見ても確かにつまんないね…」

美咲が同情したような声をあげる。

「何勝手に見てんだよ」

「彼氏の成績くらいは把握しとく必要があると思いまして」

今更ながら、『彼氏』という言葉に少し喜んでしまう自分がいる。

「榎本、お前も何で神代なんかと付き合うかな…。職員室では、毎日その話で持ち切りだ」

途端にクラスから笑い声が漏れる。ちなみに、クラスの連中は俺と美咲が付き合っていることを知っている。

「先生、だから余計なお世話……」

「先生、私の彼氏は裕也しか務まりませんよ?」

美咲の言葉に俺の顔は途端に熱くなる。笑っていたクラスメイトも、今度は俺達を茶化してくる。

「……なら神代に英語でも教えてもらうんだな」

「……はぁーい」

罰の悪そうな顔で美咲は席についた。これは仕返しが出来そうだな。