「だったら、裕也んが美咲と向き合ってあげなきゃ。美咲の目になるんでしょ?裕也んが」

「そうだよな…」

「うん、だから、これ以上は美咲に聞いてよ。ううん、聞かなきゃダメ」」

「ありがとな、渚」

俺は、渚に励まされてばっかりだな。今、一番辛いのは美咲なのにさ。

「裕也ん。もう夏だね」

「……あぁ」

「……夏休みさ、皆でどっか行こうね」

「そうだな」

俺は、ぼんやりと移り変わっていく景色を見ていた。こんな美しい景色を美咲は見れなくなってしまうのか…。

「俺が、美咲にいい景色見せてやんなきゃな」

「……裕也ん。“俺”がじゃなくて、“俺達”がでしょ?私達がいなかったらそれは、いい景色って言わないでしょ?」

渚がニッコリと笑う。

「そうだな……」

美咲が望む、いい景色。
そこには、俺の仲間達の色が必要だよな。

「裕也ん、頑張って!」

渚はそう言って電車から降りていった。

渚の色。それは掴みくてて、どこか奔放な色。

「……紫かな」

俺は笑顔でこっちに手を振る渚を見て、一人呟いた。