「神代、お前の席は榎本の隣だ」

榎本…か。確かに出席番号から言えば、隣同士になる確率は高いと言える。しかし、皆の自己紹介を聞いていない俺は、誰が榎本か分からない。

「あの。榎本って誰?」

俺はクラス全体に呼び掛ける。

「馬鹿だな、神代は。空いている席がお前の席に決まってるだろ?」

担任の先生が俺を呆れたように、出席簿で叩く。確かにその通りだよな。

しかし、その時だった。

「はーい!私が榎本 美咲だよ。これからよろしくね?」

俺は、元気良く返事して立ち上がった女の子を見る。そして目が合うと、榎本さんはニッコリ笑った。

…ドキン!

心臓が飛び上がったような感じがした。

俺はその子の瞳の色にくぎづけになった。
…淡いようで濃い藍色。

この時からだった。俺は、君の瞳に恋したんだ。