「うわぁ、もう人がたくさんいるんだね!」

美咲に連れられてやって来たのは、星見ヶ丘から少し離れたところにある川だ。美咲が言うにはこの川の名は、星見川というらしい。

「しっかし、ここは自然に近いところだな…」

俺の住んでいる菅代と、そこまで離れてないのになんて所だ…。

「結構いいとこでしょ?私、彼氏とここに来るのが夢だったんだよね」

「あれ、美咲って今まで彼氏いなかったの?」

「いずれ失明するような女とは付き合えないって男に言われ続けて来ましたからねぇ……」

美咲は笑って言うけど、やっぱり目は口ほどにものを言う。その目は悲しみの色で染まっていた。

「ごめん」

「ううん。だから私、綺麗な目だねって言われて嬉しかったし、何より、裕也が私の目になってくれるんでしょ?」

「もちろん!」

「だから、私は裕也以外の女にはならないよ」

そう言うと美咲は俺の肩に頭を乗せて来た。俺はその頭をそっと撫でてやる。

「俺も、お前以外の男にはならないよ」

「……沙梨奈は?」

「あ、あれは……」

途端に美咲は不機嫌になる。どうやら、相当根に持ってるらしい。

「私、浮気は許さないから」

その後…メインイベントの笹の葉流しが始まるまで、美咲はどこかご機嫌ななめだった。

…そしてそんな美咲の機嫌を取ろうと必死だった俺の財布はすでに底をついていた。