ガラガラ。教室を開けると、自然に一人静かに本を読んでいる莢未に目がいった。

すると、その視線に気付いたのか、それとも心を読んだのか、俺とぱっちりと目があった。

「裕也君、おはよ」

「沙梨奈、おはよ」

沙梨奈と呼ぶのは、莢未の願いだった。もう、莢未は死んだのだから、新しい自分と接してくれとのことだった。

「……眼鏡似合ってるじゃん」

「あ、ホントに?ありがとう。ちょっとイメチェンしてみたんだ」

「可愛いじゃん」

「おだてたって何もでないよ」

莢未は謙遜するけど、童顔な莢未は眼鏡が良く似合う。

「むしろ眼鏡かけないとガキに見られるだろ?」

「良く分かるね?」

そしてしばらく莢未と話をしていたら、耕平と大地が話に入って来た。

みんながいる日常。何でも話せる友達がいて、信頼できる親友がいて…。

そして何より…

「みんな、おはよう」

「おはよう、美咲」

大好きな彼女がいる。

こんな日常が毎日ずっと続いて行くと思っていたんだ。