「おはよー裕也ん」

電車に乗ると、いつもの場所に、夏服に服を変えた渚がいる。

季節は七月。あの莢未との再会から早くも二ヶ月弱が経過していた。

「おはよー、渚」

相変わらずの満員電車。
そして、やっぱり俺達の周りには何処かスペースがある。

「あのね、裕也ん。聞いて?」

「……何だよ?」

最近、渚は中学時代の頃の美咲と莢未の話を良くするようになった。特に莢未の話は俺も聞いていてすごく楽しかった。

莢未の気持ち。大分時間が経っちゃったけど、ちゃんと俺に届いたから。

「ねぇ裕也ん?聞いてるの?」

「あ、悪い悪い…で、何だっけ?」

物思いにふけってた俺の耳は、渚の話をスルーしてしまったらしい。

「裕也んと美咲の為を思って言ったんだからね?」

渚は、やれやれと言わんばかりにため息をつく。

「それで、話ってなんだよ?」