「…莢未、俺も好きだった。ホントに好きだった」

「……それだけ聞けて…よかったかな?」

莢未は俺から離れて涙を拭って、無理矢理に笑顔を作った。

「…ゆーちゃん、最後のお願い。キスして?とびっきりの甘いやつをさ」

「…美咲には内緒な」

自然に見つめ合う俺と莢未。

そうだ。ぱっちりと、くりくりしている大きな瞳。

俺は、そんな君の瞳に

恋したんだ。

俺は莢未に唇を重ねる。

こんな俺を好きになってくれてありがとう。

支えてくれてありがとう。

莢未、ホントに
今までありがとう。

そんな想いを伝え、俺はゆっくりと莢未から唇を離していく。


きっと、莢未の注文通りの甘いキスではなかったと思うんだ。

だってな。
俺が感じたキスの味は、
何だか凄くしょっぱくて切なかったから…。



第一部 『莢未編』 完