俺は渚から離れた。

「莢未……俺達のことなんだけどな」

俺がそう言うと、莢未はゆっくりと目を閉じた。

「莢未…?」

「…分かってるよ。私達の関係…でしょ?」

「…ああ」

俺と莢未は付き合っていた。そして、莢未が事故で死んだと思っていた。
しかし、実際は……生きていた。

違う。

生きていてくれたんだ。

「私は、ゆーちゃんが好きだよ。ゆーちゃんと付き合えて幸せだった」

…ドクン!

『ゆーちゃんと付き合えて幸せだった』

俺が一番聞きたかった、莢未からの言葉。

俺が待ち望んでいたはずの、莢未からの言葉。

だけど…何でかな?
今、何で俺はこんなに胸が痛いんだろう。

何で…涙が溢れて止まらないんだろう。

「裕也ん…」

俺の並々ならぬ様子に、渚はそっと俺達から距離を置いてくれた。渚なりの気遣いだろう。

「あの…ゆーちゃん?私はゆーちゃんを困らせる為に言ったんじゃなくて…その…。ああ…もう面倒くさいな!」

その瞬間…。俺は温かい温もりに包まれた。