少し探したところで、お目当ての教室はすぐに見つかった、俺は教室のプレートを確認する。

1ーC。間違いない。

「…です。よろしくお願いします」

ドアの隙間から、自己紹介と思われる声が流れてくる。こんな雰囲気でいつ入ればいいんだ?

しばらく、心の中で葛藤を続けた後、一つの結論へと辿り着いた。

自己紹介が終わったら、教室に入り、そこから強引に自分の自己紹介を始める。

我ながら完璧な作戦だ。
俺は、ドアにぴったり耳を付けながら中の様子を伺うことにした。

「…です。よろしくね」

拍手が沸き起こる。
次の自己紹介の声は聞こえてこない。
どうやら終わったようだ。
俺が教室に入ろうと思ったその時、勢いよくドアが開いた。

「うわっ…」

耳を付けていた俺は、当然、倒れ込むように教室内に放り出される。

「…名前は?」

恐そうな先生が俺を見下ろしながら尋ねてくる。

「…神代 裕也です。よろしくお願いします」

床にはいつくばったままの自己紹介は、これまではもちろん、これからも、これが最後の体験になるだろう。

クラスからは笑い声が起こっていた。