* * *

「うん、ちゃんとムラなく染まってるね。流そうか」


染まり具合を真崎さんが確認して、木崎くんにシャンプー台へと誘導される。好きだった人にシャンプーされるの、なんとも言えない恥ずかしさがあるな。


「痒いところとかない?」

「うん、大丈夫」

「お湯加減は大丈夫?」

「めっちゃ丁度いいです」


美容室でシャンプーしてもらってる時によく聞かれる質問に、本当に木崎くんはまだアシスタントとは言えど1人の社会人として働いてるんだなぁと思って関心してしまう。

私もバイトはしているけれど、それとは責任感とか重圧感とかが違うわけで。


来年から社会人として働くことに不安を持ってる私は、既に社会人として自立している同級生の存在が眩しくてしょうがない。


そう思いながらも木崎くんの頭皮マッサージが気持ちよくて、途中からはうとうとしてしまっていた。



「水篠、途中寝そうになってたでしょ」


椅子を起こすや否やクスクス笑いながら言われた言葉に恥ずかしくなって目を逸らした。思いっきりリラックスしていたことは見透かされていたらしかった。


「だって木崎くんの頭皮マッサージめっちゃ気持ちよかったんだもん」

「それはよかったです。じゃあ乾かすから移動しましょうか?」


妙にかしこまって私の顔を覗き込む木崎くんに、心臓が騒ぎ出す。木崎くんはもっと自分の顔の良さを自覚した方がいい。