「えっ今のはちがくない!?ただの褒め言葉じゃん!」

「なんか発言がチャラかったんで。あと表情がセクハラする人の顔でした」

「待ってそれどんな顔?」


気心が知れてる、といったような2人の会話に思わずふふっと笑った。そしてその後も他愛ない会話を続けていれば、真崎さんが他のスタッフに呼ばれて行ってしまう。


唐突に訪れた2人の空間に、もう好きだったのは5年前のことなのに胸の奥がざわめいてしまった。


2人きりになって一瞬沈黙がおちる。先に口を開いたのは木崎くんだった。


「·····真崎さんは誰にでも可愛いって言うからあんま本気にしない方がいいよ」

「え?うん」


分かりきったことを言われて思わず戸惑う。木崎くんには私がお世辞もわからないチョロい女だとでも思ったのだろうか。


「·····でも、綺麗になったよ、ものすごく」


伏せ目がちに施術をしながら私と視線を合わせずにそう言った木崎くんに、私はワンテンポ遅れて「え?」と返すのが精一杯で。


思考が停滞している今の私では、伏せ目になったことで瞬きの度に震える睫毛越しの目が綺麗だな、ということしか浮かばなかった。