しばらく2人とも口を開かない無音の空間が広がって、私の心臓の音だけがやけに響いてるような気がした。木崎くんに聞こえるはずはないけれど。


時間にしてみれば大して経ってないのかもしれないけど、私にとってはその沈黙はすごく長く思えて、だんだんと自信がなくなって俯いたときだった。


「はあ、」と頭上からため息が落ちる。


あ、ダメだ。後悔は多分しないって思ってたけどやっぱりきついかも。再会してその日に告白なんて早すぎたよね、と今更な反省をした。


だけどその後聞こえたのは予想外の言葉で。



「もうかっこつかないなあ、俺。先に言われるとかダサすぎ」


その言葉にさっきのため息は私にじゃなくて、木崎くん自身へのものだと知る。


「え·····それって」


オレンジ色の街頭に照らされた木崎くんの顔が真剣みを帯びる。真っ直ぐな双眸に射抜かれて、その瞳の中に閉じ込められてしまうような感覚だった。



「俺はずっと高校の頃から水篠が好きだったよ」

「うそ、」


まるで夢でも見ているかのようだった。ふわふわとして、現実味を感じられない。


「嘘じゃない。同じクラスになってからずっと見てたよ。·····途中から水篠に避けられてたけど。それでも卒業式の時に言おうって決めてたのに結局タイミング逃して。同窓会では話しかけるって決めてたのに無理で。だからもう諦めてたのにまた今日会えたから今度こそはって浮かれちゃってさ」


こんな夢みたいなこと、あっていいのかな。