教室で遠目に見る木崎くんはいつも輪の中心にいて何でもできて、余裕があって自信を持っていそうな態度からは隙なんてなさそうだと思っていた。


だけど、


(木崎くんってこんな表情もするんだ)


少し緊張した面持ちの真剣な顔が意外で、それがすごく綺麗なものにみえた。長い睫毛越しに見える澄んだ双眸から、目が離せなくなる。


自信に満ちあふれていて淡々と簡単に何でもやってのけてしまうから、あまり何かに真剣に打ち込んでいる姿は想像つかなくて。


だから不意打ちで見てしまった、普段は見せない木崎くんの真剣な表情と意外と不器用なところに私はあっさりとときめいてしまったのだ。




「よし、終わり。痛くなかった?」


恐る恐るといったような顔で私を窺うように見上げる木崎くんの顔に、急に顔を直視できなくなって顔を逸らす。


「うん、大丈夫だったよ。本当にありがとう」

「ならよかった。先生いつ戻ってくるかわかんないし何か飲み物でも買ってくるけど何がいい?」

「ええ?いいよそんな」

「俺も喉渇いたからついでだし」

「…じゃあ、オレンジジュースで」


今日だけでも木崎くんにお世話になりすぎていて少し躊躇ってしまったけれど、ついでだからと言われてしまえば断りにくくて素直に好きなジュースを伝える。すると木崎くんは吹き出すように笑って、「それ飲んだらもっと喉渇くやつじゃん」と言いながらもオレンジジュースを買ってきてくれた。


いつも飲んでるオレンジジュースだったけれど、その時飲んだオレンジジュースはいつも以上に甘酸っぱく感じた。