木崎くんが湿布を貼ってくれたところからひんやりとした温度が伝わって、じんじんとした熱が徐々に引いていく。


「よし。あと他に怪我したとこない?頭打ったとこはさすがに俺じゃ見れないからそれ以外で」

「うん、大丈夫。本当にありがとう」


木崎くんが私を心配そうに見つめながら「本当に?」と確かめる。その視線が私の右肘に向いたところで止まった。


「あ、嘘つき。肘擦ってるけど」


そう言われて右肘に視線を落とせば血が滲んでいて、きっとここも倒れるときに擦ったんだと思った。足首と頭の痛みに気を取られて自分でも気づいていなかった。


「ほんとだ。私も気づいてなかったよ」

「気づかないとかそれ鈍すぎない」

「そこまで痛くないから大丈夫ってことだよ」

「痛くないとしても駄目。女子なんだから自分の身体は大事にしないと」


当たり前かのようにそう言う木崎くんに、この人がモテる理由がわかった気がした。もちろん顔がかっこいいっていうのもあるんだろうけど、そうやって平然と女子扱いしてくれるところがずるいんだと思う。


そう思っていれば突然「水篠ごめん」と呼びかけられて何だろうと目を向ける。


「俺さっきからあんだけ保健委員だからとか言ってたけど、湿布貼るとか単純な手当以外は人にしたことない」


急にどこか神妙そうな顔で何を言うかと思えばそんなことで、「これくらいどうってことないし平気だよ」と笑った。だけど木崎くんは「そういうことじゃなくて、」と首を振る。


「できるだけ慎重にやるけど、痛かったらごめん」

「え?」

「痛かったら言って」


そう言うなり木崎くんが消毒液を染みこませたコットンをピンセットでつまんで、患部へとゆっくり近づける。その指先が、ほんの少し震えていた。