「えっ木崎くん?大丈夫だよ?少ししたら自分で行くから」

「いいから。保健委員としての仕事くらいさせてよ?」


いくら保健委員だといえども、ここまでのことは仕事じゃないんじゃないかって思ってしまったけれど、有無を言わせない顔でゆったりと綺麗に笑う木崎くんに反論できなかった。


「…ごめんね、ありがとう。重いでしょ?」

「気にしなくていいって。全然だから、ってか俺も一応男だし?水篠1人くらいなんてことない」

「…ありがとう」


きっと気を遣ってくれてるんだと思う。ああは言っても体育館から保健室までの道のりを人を抱えて歩くのは絶対にきついはずだ。

だけどそれを微塵も感じさせないように振る舞う木崎くんはすごいと思う。今まで苦手意識を勝手に持っていたことが申し訳なくなってきて、自分の単純さに呆れた。


私の太股と背中から二の腕にかけて触れる木崎くんの手から体温を感じる。木崎くんに触れられた箇所が熱くて仕方なかった。




「あれ、先生不在?」


保健室に着いたはいいものの、ドアを開ければ肝心の先生が不在だった。「まあいいか」と木崎くんがそう言って私をゆっくりベッドに下ろしてくれる。


「木崎くんわざわざ運んでくれてありがとう」

「いいっていいって。足捻ってたよな?湿布貼るから足出して」

「え、そんな手当までしてもらうなんて悪いって」

「なに言ってんの。これこそ保健委員の仕事じゃん」


フッと息が抜けるように笑って、私の足下に跪いて私の足先を取る。

なんだか童話に出てくる王子様みたいだってガラにもなく思った。