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高校2年生、夏。男女別に別れた体育の授業では、体育館を半面にしてそれぞれバスケのゲームが行われていた。


「キャーーー!また木崎くんシュート!本当にかっこよくて運動神経抜群とかやばすぎない!?」

「まじで目の保養だよね。汗がキラキラして見える」

「うちの学校じゃもうダントツじゃない?」


仮にも授業中だというのに黄色い声が飛び交う。今試合中の女子以外、なんなら試合中であるはずの女子の一部も男子の試合の方へ熱い視線を送っていた。

その視線の先にいるのは木崎伊澄くん。寸分の狂いもなく爽やかに整った顔立ちに、雰囲気までもが高校生とは思えないほど既に洗練されている。


女子が騒ぐのも納得の顔はしていると思う。だけど、私はそんな彼に少しだけ苦手意識があった。


あまりにも完璧すぎてそれが少しこわくて、そして常に余裕そうにしている姿に、表面上は誰にでも優しいけれど内心は冷めてそうって勝手なイメージを持っていた。


木崎くんって欠点あるのかな。

体育館の隅で観戦してるとはいえど、男子コートの方を見てぼんやりと考えていたのがきっと悪かった。


「危ない!避けて!!」


その声が聞こえた時にはもう遅かった。


試合コートから飛んできたボールが頭にぶつかる。視界が揺らいで意識が遠のく。足首がグギッと音を立てて崩れ落ちるようにその場に倒れた。