「うーん、だとしても嫌だなぁ」

「なにが?」

「他の男に会いにいく水篠をこれ以上可愛くすんの。俺以外の男には見せたくないよ」


今までとは比にならないくらいに顔がぼぼぼって熱くなって思わず顔を手で覆いたくなった。

本当に木崎くんってこんなこと言う人だったっけ?それとも接客のリップサービスのひとつ?私が免疫なくて勝手にやられちゃってるだけ?

困惑したままそっと余裕そうに笑ってる木崎くんを鏡越しにチロりと恨めしげに見つめた。


「もう木崎くん変わりすぎ。木崎くんってそんなにお世辞言う人だったっけ」


私の言葉に木崎くんは暫しキョトンとした後、「お世辞なんてひとつも言ってないけど」となんてことないかのように言う。


「ただ、水篠に会えて浮かれてるから今まで思ってて言えなかったこと言ってるだけだよ。同窓会のときは話せなかったしね」



────もう、これ以上何も言わないでほしい。

いい加減私の心臓が悲鳴をあげる気がする。


頭がキャパオーバー状態の私は何も言えず、恥ずかしさを紛らわすように木崎くんの手元だけを見つめることにした。


そこで、アイロンで緩やかなウェーブを作る木崎くんの手がほんの少し震えていることに気がついてしまった。


その瞬間懐かしい思い出が走馬灯のように頭の中を駆け巡る。