私の髪にハサミを入れる真崎さんの手先を見つめながら考える。


「確かに高校生の時は好きだったけど、さすがにもうあれから何年も経つし、今もまだ好きとかではないですよ」

「あー。今日久々に会ってときめいたりとかはしなかったんだ?」

「··········」

「あ、それはしたのね」


真崎さんが無言の肯定を示す私を大人びた顔で笑う。

今までの人生で唯一好きになった人だし、大人になったとはいっても好きになったところはそのままだったらやっぱりどうしてもときめくのはしょうがないことだと思う。


「杏寿ちゃんずっと彼氏できてないって言ってたよね?引きずってるとかじゃないんだ?」

「うーん、引きずってるとかではないはずですけどね。ただ木崎くん以降好きな人が出来ないだけで」

「それもうイコール引きずってるってことじゃないの」

「え、そうなんですかね?」

「いや知らんけど。でも大学生とか出会いそこら中に転がってるのに出来ないってことはやっぱりそういうことなんじゃない?って俺は思うかなー」


私が考え込む沈黙の間に、シャキシャキとハサミの音が響く。

出会いは確かになかったわけではないけど、ピンとくる人がいなかった。



「あ、出会いといえば今日夜合コンなんですよね」


木崎くんとの再会の衝撃で忘れかけていた事実を思い出す。あまり乗り気ではないからやっぱりそこにも問題はあるのかもしれない。