トントン
『しゅうくん入るよ。』
中から返事がないから私は部屋のドアをゆっくりと開けた。
ギギギィ
建付けが悪いのかドアが嫌な音を出す。
電気もつけずにテレビの前に愛しいしゅうくんが座っていた。
面白い番組を見ているのかと思いきや、テレビの画面は砂嵐になっていた。
『もう~。電気もつけずにどうしちゃったの?』
しゅうくんからの返事はない。
理由は分かっている。
同棲しだして少しするとしゅうくんは何故か会社からリストラされたのだ。
リストラをされた人間は確かにこの世の中に沢山居るが、しゅうくんの会社は理由さえ教えてくれなかった。
一度怒りに任せて会社に電話したこともあったが、会社の人からは『よく電話して来れたな』と冷たい態度を取られそのまま電話を切られた。